chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

ココ・シャネルの映画を見ながら

 
オドレイ・トトゥが主演しているということで見てきた。
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/cocoavantchanel/
ファッション好きな若い人に、ぜひ見てもらいたい映画。ただし、歴史や地理なんかのベースになる知識がないと、ただのラブロマンスにしか見えないかも・・・
 
映画の内容は、戦後にカムバックしたココ・シャネルおばぁちゃんが、若き日を振り返る、という語り口なんだが、2時間ほどの映画の尺におさめるにはどうにも時間不足で、大河ドラマにして毎週日曜日に見たいぐらいのレベル。世界史の知識とかヨーロッパの地理の知識をフル動員して見ないと、話についていけない。この点で脱落してしまう日本人は多かろう。ヨーロッパの人にとっての「常識」は、何の説明もなく、ばっさり端折られてる映画なので、そこを補完しながら見ることができないと、意味が分からない。さすがに時代考証はしっかりやってるんだろうと思った。少なくとも素人目には。細かい小道具が、時代とともに、ちゃんと変わっていくのをチェックしていくだけでも面白い。
 
この映画に描かれる時代の、ヨーロッパの豊かさにも驚かされる。今、不況にあえぐ日本ですが、不況にもなるわけだよと思った。だって今、自分の手を動かしてこつこつ良質な物作りができる人なんて、減る一方じゃん。モノ余りで作る必要もなさそうなもんではあるんだけど、中国製の安いものを買い集めれば豊かになれるのかというと、それはなんか違うだろうと、この映画を観たら思わずにはいられない。既製品を買い集めることでは、新しいスタイルなんて生み出せない。
 
普段、シャネルなんてダセぇ、っていうイメージがあって、その理由もわかった気がした。だって、1971年に87歳で亡くなったおばぁちゃんですよ。私が生まれた年じゃないですか。今の人が、1971年以前にココ・シャネル本人によって提唱されたファッションやデザインを見てダサいと思っても、それはしょうがないよね。
ただし、じゃぁシャネルを超えるようなものが現在生み出されているのかといえば、・・・まだ全然そうじゃないのかもしれないなと。「シャネル的なもの」っていうのは、かなりいろんな所に要素として入り込んで、現代に生きている。上っ面がちょろちょろ変わってるだけでさ。背景にある人生哲学的なレベルの話では、勝負できるブランドなんてそうそう無いんじゃなかろうか。
 
この映画を見ているときは、一方でいろいろ考えごとにも集中できたので、そういう意味でも充実した、いい映画だった。シャネルの歴史は、20世紀の歴史と切り離して考えることはできないし、良くも悪くも20世紀の価値観の中に生きている。現代に生きる自分たちとしては、じゃぁ21世紀の価値観(20世紀に夢見た20世紀の価値観の中の21世紀ぽいものではなく)て何なのよ、ということに考えが及ばなくてはならないと思うんだが、残念ながら、それをシャネルおばぁちゃんが教えてくれることはない。
 
日本のコスプレや、メイドカフェの衣装や、キャバクラ衣装を、もし、シャネルおばぁちゃんが見たら、何と言うんだろうね?
 
批判ではなく、その背景にあるものは何なんだろう、というようなことを、きちんと見てみないといけないと思った。