chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

国の借金はどういう場面で正当化されるか

 
国債って、そもそも制度として欠陥があるよね、という話の続き。
http://d.hatena.ne.jp/chintaro3/20100624/1277558948
 
原則としては、欠陥があるものは使わない方が良い。けども、たとえ欠陥があっても、それを補って余りあるメリットがあるのであれば、それは正当化されうる。さて、国債の場合、それは何か。
 
で、1番に思いつくのは、日本は技術開発などの国際競争で優位に立ちつづけないと非常にまずいことになるという事。日本は、原油穀物などの基本的なエネルギー源を海外に頼っているから、黙っていても外貨が出ていってしまうという構造的な弱点がある。だから出て行く以上の外貨を常に獲得し続け無くてはならないという宿命がある。
戦後から現在までは、諸外国よりも優れた工業製品を作り、それを世界中に売りさばくことで外貨を獲得してきた。しかし、放っておけば工業製品を生産するノウハウというのは徐々に海外に流出し、日本ならではの優位性は時間と共に薄れていってしまう。そういう環境下でなお、優位性を保ち続け、外貨を獲得可能な地位を守るためには、自ずと先行投資というものが必要になる。
 
(今は金融による外貨獲得の額が非常に大きくなっているということだけども、これについてはあとで考える)
 
もしここで、財政健全化のために大幅増税をして、企業が先行投資や海外投資に回せる予算が減少するようなことになると、財政が健全化する一方で、長期的に見た時の日本国の貿易収支にとっては深刻な悪影響となる可能性がある。もし、財政が完全に健全化して黒字化して借金を完済できたとしても、その時、外国に対する技術開発競争に負けて外貨の獲得がおぼつかなくなってしまっていたりしたら、それは財政健全化以上に深刻な国の経済問題になっている可能性がある。
 
つまり、日本が外貨を獲得できる地位・優位性を維持しするためには、日本国と国債の信頼を高く維持し続け、その信頼でもって増大する赤字国債を支え続けることも、その助けになるといえる。・・・クレイジーだとは思うけれども。
 
そして何十年後かに信用が破壊されて国債がガタガタになったとしても、技術が残っていればしばらくは外貨獲得を続けられるだろう。 国破れて山河あり じゃないけれども、経済戦争の中で国債が敗れるようなことが起こったとしても、それによって育まれた知的財産まで破壊されるわけじゃない、というところがミソなのだな。
 
ただまぁ、実際問題としては、世の大方の増税反対論者は、そういうことを考えているわけではなく、ただ目先の苦労から逃れようとしているようにしか見えないわけで、そんな論調にはどうにも賛同しかねる。先延ばしにすればするほど、その後の痛みが大きくなることへの覚悟があるようにはとても見えない。
 
何度でも言うけど、あの80年代のバブルの時でさえ、国債残高はほとんど減らなかったんだぞ。好景気になるのを待てなんていう人は、待っていれば80年代のバブルが再来するとでも思っているのだろうか。それも80年代のバブルを遥かに上回る規模のまま、何十年も好景気が続かなければ、財政健全化は望めないのだぞ。そんなの明らかに絶望的じゃないか。
 
今はエネルギー問題も食糧問題も深刻ではない恵まれた時代なのだから、今のうちにみんながちょっと我慢して、ちょっと無駄を減らすだけで、技術開発などに悪影響を及ぼすこと無く増税に耐えることが可能なはずだ。ちょっと想像してみてほしい。消費税と所得税と、社会保険に年金、その他諸々の公共料金が全て今の2倍の料金になったとして、あなたは明日の食べ物にも困るような困窮状態になるだろうか。そんなはずはない。今なら失業者保険や生活保護も機能しているのだから、失業を過剰に恐れるべきでもない。
もし今何もせずに将来、エネルギー問題や食糧問題などの経済実態に直接大きな影響を与える問題が起こったとき、それと一緒に金融不安が起こってしまったら、それはもう酷いことになるだろう。今ならまだ、皆が逃げずにちゃんと問題を見定めて、冷静な対処をすることが可能なはずだ。
 
2011/6/24追記
この記事を読んで、うっかりまた同じエントリーを書くところだった、その2。
麻生が仕掛けた“時限爆弾”消費税10%強行する背景
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110624/plt1106241450002-n1.htm