chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

「国家公認電子マネー」はアリかナシか

 
ネタ元
夏野氏が提言、「モノづくりから仕掛け作りへ」
http://k-tai.impress.co.jp/docs/event/mobidec2010/20101125_409290.html
 
全体としては、よく出来た話だと思うんだ。でも、ちょっともにょる部分がある。
 
ガラケー市場が成長できたのは、そこで先行していたNTTドコモが、元国営の電電公社を引き継いだNTT系列のものだったから、その「信用」のおかげで、ガラケー上の金銭取引の手続きを簡素化することができた、という側面は絶対ある。ところが、この話の中では、「社会的な信用」についての話を何もしてない。「信用」という単語すら出てきていない。
 
技術的な信用云々の話ならば、今さら馬鹿馬鹿しいほど、ベースになる仕組みっていうのは十分進歩してるはずなんだ。でも、実態は、

スマートフォンの普及はバラ色ではない」として、課金や決済に柔軟性が出ない限り、CPにとってスマートフォンの普及は追い風にはならないという見方を明らかにした。

記事から引用。
 
「課金や決済に柔軟性が出ない」のは、要するに「信用」が問題とされるからだ。
 
くどいけど、ガラケー市場が今うまくいっているのは、電話事業が国家事業だった時代の昔の信用資産というのがまず有って、そしてその後も現在まで、その信用に応えるようないい仕事をちゃんと電話会社がやってきたから、っていう積み重ねが前提としてあるわけでしょ。で、その土台となる「信用の積み重ね」、って言う部分に関して、夏野さんが主体的に何かやってきた訳じゃなくて、その上にうまく乗っかってきただけじゃん。その立場で、

ガラケーは押されているような印象の報道が多いが、日本で今一番元気な会社はミクシィDeNA、グリーで、ガラケーの会社が伸びている」とし、「スマートフォンの最大の課題は都度課金。今月は50万ダウンロードでも、来月には関係ない。ゲームで900円などという価格もあるが、1ダウンロードで終わり。ビジネスモデルにならないのが実態」

この部分は野次馬が何か言ってるのと同レベルの話だと思うんだよね。現状認識としては正しいんだろうけど、ぶっちゃけ、iPhoneソフトバンクではなくNTTドコモの端末として普及していたら、現状は全然違う物になっていた可能性がある。すなわち、夏野さんの指摘は本質を突いていないと思うのだ。
 
ガラケーなみにスマートフォンやインターネット上での金銭取引を活性化させるためには、そこで行われる金銭取引に関して、NTTなみの信用力のある組織が、その正当性を保障・担保してくれる必要がある。現実解としては、現状では主にカード会社やEdyのような電子マネー企業グループがそれをやっている訳だね。
 
時間軸をちょっと長くとって考えてみよう。電子マネーが今後ますます普及して、国民の大半が、その日常生活における支払いをすべて電子マネーで済ませるようになったら、その運営をそのまま民間企業にまかせっきりにしておいて良いのだろうか? 
 
電子マネーは、近い将来、社会的に非常に重要なインフラに成り得るものだ。
 
どこかの時点で、主要な電子マネー事業を日銀に移管・統合集約して、日銀の管理下においたほうが合理的、という状況が生まれるのではないか? 日本銀行券のように、法的にもきちんと規定された「国家公認電子マネー」というのが必要な時代が来るのではないか?
 
いうまでも無く、「国家公認電子マネー」なんていうものを実現するには長い時間がかかるに違いない。それでも、そのストーリーが有り得るのなら、「国家公認電子マネー」に向けた壮大な準備こそ、今すぐ始めるべきことだと思う。 携帯電話の中に閉じこもった市場だったなら、電話会社が政府の代わりを勤める事ができた。でも、ガラケーから卒業しようというのなら、決済システムもそれにふさわしい物が必要だ。
 
 
追記12/1
「モノづくりから仕掛け作りへ」なんて頭よさそうなこというエリートが増えすぎて、仕掛けばっかり増えすぎてこのザマですよ。
ますます乱立していく国内の電子書籍の配信プラットフォーム --- もとまか日記
http://d.hatena.ne.jp/moto_maka/20101130/1291059740