chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

藻の次は2酸化炭素回収方法がネックになりそう

 
ネタ元:
石油を大量生産する藻類を発見 2万ヘクタールの土地があれば日本の石油輸入量分の生産が可能に ---痛いニュース
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1576965.html

研究チームの試算では、深さ1メートルのプールで培養すれば面積1ヘクタールあたり年間約1万トン作り出せる。「国内の耕作放棄地などを利用して生産施設を約2万ヘクタールにすれば、日本の石油輸入量に匹敵する生産量になる」としている。

 
日本の1年間の石油輸入量≒約2億トンぐらいらしい。
ここでは施設のサイズのみが問題になっているけど、もう一つ、深刻なボトルネックがあるよね。それは
 
藻が石油を作るときの原料となる2酸化炭素をどうやって確保するのか問題。
 
石油の主な組成は水素と炭素。光合成で水を分解して水素が出来るのは問題ないとして、問題は炭素だ。重量比で石油の8割以上は炭素なので、2億トンの石油に対して、1億8000万トン以上の炭素を、2酸化炭素という形で水中に供給しなくてはならない。
 
え?2酸化炭素なんでどこにでもあるじゃないかって?そりゃ有るか無いかで言えば有る、だけど、問題は絶対量。

大気中の2酸化炭素濃度
http://rikanet2.jst.go.jp/contents/cp0220a/contents/f_01_07.html
 
化石燃料のせいで2酸化炭素の濃度が上がっている、なんていうけれど、その急上昇した現在ですら、その濃度は重量比400ppm程度。室内などの環境によっては1000ppm以上となる場所も珍しくないらしいが、それでも1000ppm=0.1%というレベル。 この2酸化炭素を、石油製造に必要なだけ効率よく集めて、藻プラントに供給し続けることが出来なければ、どんなに優秀な藻だろうが大量の石油を作り出すことは物理的に不可能だ。
 
効率よく工業用の2酸化炭素を得る手法としては、石油化学プラントの副産物として生じる2酸化炭素を有効利用するのが安いらしい。しかし、この方法は石油が枯渇したら使えないし、そもそもそうやって生産されている工業用2酸化炭素の年間生産量が現状でせいぜい100万トン程度のオーダー。2億トンの石油の代替品を作るのに必要な2酸化炭素を確保する能力は無いし、仮に作るとしても、その原材料として数十億トンの石油が必要、なんていうんじゃ意味が無い。
 
つまり、意地でも大気中の2酸化炭素をかき集めて、藻を繁殖させるプラントに効率よく送り込む方法が必要になるわけだ。
 
金魚の水槽みたいに、水の中で空気をブクブクやればいい? いや、あれは水の中に酸素を送り込むための方法。大気中に酸素は約20%もあるから、あんな方法でも金魚が生きる程度の酸素は確保出来るわけ。せいぜい0.1%以下の濃度しかない2酸化炭素2億トン分の為には・・・体積比とか重量比とかごちゃごちゃだけど、ケタまで違わないはずなのでざっくりしたイメージで考えると物理的に少なくとも2000億トンレベルの大気を水中でブクブクやる必要があり、もちろんそんな方法じゃ大気中の2酸化炭素のごく僅かしか水中に吸収されないはずなので、さらにその数十倍の大気をブクブクブクブク・・・・・無理じゃないか?ブクブクやるのにどんだけコストがかかるんだって話になっちゃうよな。
 
だってさ、効率よく低コストで大気中の2酸化炭素を回収する方法はまだまだ研究中な訳で、だからこそ2酸化炭素濃度の上昇が問題になっている訳だから、こりゃ藻で石油を作るっていう話は、やっぱりそんな、とんとん拍子には進まないね。次は2酸化炭素回収手法の開発がヤマだな。
二酸化炭素貯留 --- Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E9%85%B8%E5%8C%96%E7%82%AD%E7%B4%A0%E8%B2%AF%E7%95%99
 
ちなみに、石油の起源のうちの生物由来説として、太古の時代に繁殖した藻に由来するんじゃないかという話がWikipediaにあった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E6%B2%B9 --- Wikipedia
2酸化炭素の濃度が今の10倍もあったら、そりゃ効率よく藻から石油を生成できちゃうだろう。逆に言えば、その太古の藻の大繁殖のために大気中の2酸化炭素のほとんどが石油化されつくしてしまい、かつて石油を生成していた藻が絶滅に瀕するような事態になっているのが現在、なのかもしれないな。
 
もっとも、それでもとりあえず石油プラントとか、火力発電所などに併設する形で、藻プラントを作り、排出される2酸化炭素を光合成して石油化する、というのでも十分意味があるだろうから、そこから初めて欲しいね。
 
 
藻のプラントには広大な土地が必要なので、太陽電池とどっちがエネルギー効率が良いか、という話も比較すると面白そう。最大の違いは、電気は貯蔵が面倒だということ。石油の方が貯蔵には有利だね。
 
関連
asahi.com朝日新聞社):生産能力10倍 「石油」つくる藻類、日本で有望株発見 - サイエンス
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.asahi.com/science/update/1214/TKY201012140212.html
 
生産能力10倍 「石油」つくる藻類――は本当か?
http://togetter.com/li/79490