chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

映画リンカーン

 
映画館は、考え事をするのに具合が良い。何か適当な映画があったら見ようと適当に映画館に行って、なかんずく興味がもてたのが「リンカーン」という映画だったので見てきた。
 
リンカーン http://www.foxmovies.jp/lincoln-movie/
 
最初にスピルバーグ監督の挨拶映像があった。そうなのか、スピルバーグ監督の映画なのか、こりゃ期待できそうと真面目に見た。南北戦争とかリンカーンの話なんてのは、日本で言う所の信長・秀吉・家康レベルでアメリカの定番物語のはずで、いままで何十回と映画化・ドラマ化されているネタだ。日本でも有名な南北戦争時代の映画といえば「風と共に去りぬ」とか。それだけの定番ネタをスピルバーグ監督が手掛けるのだから、期待もできようという物。
 
ストーリー自体は、日本人にとってあまり興味のわく話ではない。話の中心は奴隷解放の条文を合衆国憲法に盛り込むよう憲法改正する事。奴隷問題自体、多くの日本人にとって全くなじみのない話。田舎の映画館では、観客は本当に俺一人だった。貸し切り状態。金払って奴隷解放の話を見に行こうなんていう雰囲気じゃないんだな今の日本て。
 
ほとんどの人が歴史の勉強の中で結末を知っているという、ネタばれどころじゃない話で、映画を作って盛り上げるというのがいかに難しいか、想像に難くないと思う。が、そこは流石スピルバーグ監督だよねー。すばらしい盛り上げ方で、あらゆる手段を尽くしてやっとこさ憲法改正の決議が通った場面では、思わず俺も拍手したよ。(ただし観客は俺一人。)で、まぁ、最後リンカーンは撃たれて死ぬ訳だが、そりゃまぁ汚い手も含めてこれだけの事をやらかしたら撃たれてもしょうがないわな、とも思わせつつ、それでも奴隷解放という正義は正義なのであり、リンカーンは英雄なのだという主張も明快でアメリカらしい。

 
それにしても、今更ながら驚いたのだけど、リンカーンて、ほんの150年ほど前の人なのな。俺の40数年の人生をまるっと4回分さかのぼっただけでリンカーンの時代だよ。そう考えるとすげぇ最近じゃね? 中学や高校で習った時は大昔の話と思ってたけど、年を取れば取るほど、歴史の話が最近の事に思えるようになってくるもんなんだね。
 
はてブでこんな動画が流れてきたわけだが


これが1900年頃という事なので、この映像に映っている50歳以上の人は、子供の頃、リンカーンと同時代を生きていた事になる。
 
 
 
ちょっと気になるのは、なんで今更、ハリウッドがこういう「リンカーン」なんていう作品を世に問うてきたのか。何がしかプロパガンダ的な意図があるのかないのか。 リンカーンの負の側面を最小限しか映像化しないあたりからして、言うまでも無いか。
 
・おそらくアメリカ国内でも、歴史の授業を真面目に受けておらずリンカーンをよく知らない人も少なくない物と思われ、そういう人たちに向けた教育的な意味もあったりするのかな。
奴隷解放したリンカーン共和党で、黒人と白人の混血として初のオバマ大統領が民主党ってのも、面白いっちゃ面白い。リンカーンの時代には、民主党は強硬に奴隷解放に反対して黒人差別していたのに。
・「アメリカは人権を尊重してこういうことをやってきたんだ」と内外に示すという意味では、人権侵害の問題を抱えた中国などの国を牽制する意図が有るような気がしないでもない。もっとも、Wikipediaによると、リンカーンはインディアンの大量虐殺を指揮しているらしいのだが、それに関してこの映画で何も言わないのは、何というか、アメリカ流ですね解ります(棒)。
・折しも、日本でも今、憲法改正議論がにわかに活発化している。改憲論者にとってこの映画は、これ以上ないエールと言えるだろう。
 
  
 
 
私は現時点では日本の憲法改正にはかなり慎重派。戦後に今の憲法を制定した人たちと、今の改憲論者とを比較して、今の人の方が優れているとは、どうも思えない。国民的な議論が高まっているとも思えない。なにしろ、田舎の映画館とはいえ、この映画の観客が俺一人だったのだからね。