chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

ハモンドオルガンについて

 
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ハモンドオルガンの説明を見て気がついた事:
・1個のモーターの回転を軸に、多数のギアを回して、それをピックアップで拾っているという事は、音階の周波数比は整数又は分数になるわけだ。無理数は原理的に実現不可能だ。なので、つまり厳密な意味での平均律は実装不可能。かといって、単純な古典調律でもなさげなので、ハモンドの設計者は、どのような調律を施すかということについて、相当な吟味をしたはずだ。これもオリジナルのハモンドオルガンの味の1つになっていると思われる。
 
・各音程の比が「整数又は分数比」であることは、和音の響きにも良い効果があるだろう。

・A音さえあわせば、他の音程も同時に確定する。調整できないとも言える。
 
・1個のモータによる回転が起点になって音が作られているという事は、全ての音の位相関係が固定されているという事だ。位相の違いは、そのままでは人間の耳では聞き分けられないが、しかし、ハモンドオルガンで使用されているアンプは真空管アンプであり、かなりの歪が生じる。ここで、倍音の位相関係が一定である事に意味が出てくる。歪み方に再現性が出てくるので、それを想定して最適の位相関係を機械的にセットすることが可能になる。これは昨今のデジタルシンセでも真似できないものが多いはずだ。
 
・ギアの回転をピックアップでひろっているということは、ギアの歯車とピックアップの位置関係が常に一定である必要があるということだ。当たり前の話に見えるが、これを機械的に実現するのは、実はけっこう面倒な話だ。91枚もあるギアの芯だしを、職人技で完璧にこなさなくてはならない。機械組み立てのプロの職人でも、ちょっとたじろぐ面倒くささだ。これは確かにコストがかかる。
  
・原理的には、歯車の歯の形を工夫することで、例えばトランペットの音色を出す、なんてことも可能のはず。昔、子供の頃、構造は解らないが、サンプラーFM音源も無い時代に、トランペットの音色で演奏しているオルガンをNHKでみて驚愕したのを良く覚えているが、こんなシンプルな原理でも、それを実現する事は可能だった訳だ。
 
 
その他、考え事:
ハモンドオルガン以外にも、当時いろいろなオルガンがあったはずだし、ハモンドが製造中止に至る過程では、日本のヤマハをはじめとして多くの競合メーカーが、より高スペック・低価格のオルガンを発売して、市場を席巻していた。しかし、それらの多くは、現在はもう、ほとんど還りみられる事は無い。なぜハモンドオルガンは、根強いファンを獲得して、未だにいろんな音楽シーンで使われ続けているのか。
 
・現在のデジタルシンセや音源でも、ハモンドオルガン風の音色は、ほぼ必ず収録されている。実際に、DTMで音色の選定をしてみると、ハモンドオルガンの音色って、確かに使い勝手がいいのよ。出しゃばらず、かといって埋もれるでもなく、適度に音楽に華を添えてくれる。そういう「すぐれた音色」は、どのように作られたのだろうか。
 
・調べてみると、ハモンドオルガンて、もともとは教会で使われる事を想定して設計されていたらしいね。教会での様々な冠婚葬祭での音楽を提供する楽器として想定されていた訳だ。ハモンドオルガンの音色に包まれて、結婚式やお葬式を挙げた人がたくさん居るのだ。
 
・つまり、ハモンドオルガンの音色作りとは、そういう結婚式とかお葬式とか、教会のもろもろのイベントでの重責にふさわしい音色・・・を作る作業であったわけだ。ハモンドオルガンの開発者は、結婚式とかお葬式とかのシーンを思い描きながら、楽器の音色を作りこんで行ったのだ。これが、シンプルな仕組み(現在のシンセと比較して)の中に、的確に必要な機能だけを凝縮して積め込む事が出来た、理由なのではないかと思う。ハモンドオルガンは、類似機種との相対比較の競争の中では破れてしまったが、ある種の絶対的な美の基準、心に響く音色、を持ち得ているのだと思う。それが、時代を超えて通用しつづける理由なのだろうと思う。