chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

フリーウエアにも統計上の「実質価格」が必要だ

 
GDPに「名目GDP」と「実質GDP」があることは勉強した。それを分解してさかのぼると、物の価格には「名目価格」と「実質価格」があるということになると思われる。名目価格は実際の流通価格。実質価格はデフレやインフレの影響を補正した本来の価格。
 
とすると、フリーウエアの名目価格は¥0円。これは疑いようがない。
では、フリーウエアの実質価格はいくらなのか? 名目価格に一定の補正係数をかけたものを実質価格とするならば、名目価格が¥0円であるフリーウェアの価格にどんな係数をかけようが、実質価格も¥0円ということになってしまう。
 
これはおかしくないか?
 
フリーウエアといえども製作費はかかっている訳だし、それを無視してユーザー視点で評価するとしても数千円の値札がついてもおかしくないフリーウェアは山ほどある。
この場合、名目価格は0円であっても、実質価格はその「本来あるべきと考えられる値段」で経済統計にカウントしないと、「実質GDP」などの経済指標が現実の豊かさの実感から乖離してしまうのは当然だ。そこらへんに転がっている石ころと、Webをささえる天下のApacheが、経済指標の上では同じ¥0円だなんてありえない。
 
需要と供給で価格が決まる、という原理から、無限にコピーできるソフトは供給が無限だから、有限な需要に対しての適正な流通価格は理論上限りなくゼロに近づく、という考え方もあるかもしれない。そこで名目価格がゼロ円になってしまったのがフリーウェアと考えることもできる。
でも、実質価格を考えるとき、「理論上ゼロに近い」と「完全なゼロ」は全然違う。「理論上ゼロに近い」金額でも、それに膨大な供給数を掛ければ、一定のまとまった金額になる。ゼロではどこまで行ってもゼロだ。統計上、その乖離はもはや無視できない。
 
そのためには、世の中のありとあらゆるフリーウェアや、オープンソースの知的財産に関して、みんなで認知できるような統計上の「実質価格」を定めるということが、経済を正しく動かしていくためにぜひとも必要になるはずだ。ここで注意してほしいのは、実質価格で取引せよと言っているのではないということ。このソフトの価値を金銭で評価するとこれぐらいだよね、という共通認識を、皆で持つようにしたらどうか、という話である。
 
そのためには、これらのソフトウエアに関わる人が、遠慮せずにもっとお金のことを言うような雰囲気作りがあって良いと思う。
まず、¥0円のフリーウエアに対して、「あなたならこのソフトをいくらなら買いますか?」というようなアンケート項目を必ず作るようにして、ダウンロードした人の評価を仰ぐという方法が考えられる。ある程度のサンプルがまとまって平均を出せば、そのフリーウエアのダウンロード数と平均価格から、そのフリーウェアの実質価格や経済効果を推し測ることが少なくとも現在よりは適正な形で可視化することが可能になるはずだ。
次に、製作費ベースで考えて、そのソフトを製作するのにかけた費用+作業時間×チャージ(これはプログラマのスキルにより自己申告)で、大まかな製作費を算出して、「このフリーウエアにはこれだけの製作費がかかっています」ということを明示してもらう。
ユーザー評価による経済効果と、実際の製作費を差し引けば、そのソフトが実経済にたいしてどれだけ有益なものであったかをわかりやすく金額で計算することが可能になる。たとえそれが数十%の誤差を含むいい加減なものであったとしても、まったくどんぶり勘定もしくは何の計算もしていない現在よりははるかな進歩だ。
 
そしてこの問題は、経済学者に丸投げして愚痴をこぼしているだけでは何も解決しないことは明らかだ。ソフトに一番詳しいソフトウエアエンジニアこそ、この作業の適任者だ。
他人事ではない。
 
【関連リンク】
経済学からの伝言 -- 404 Blog Not Found 2006年11月11日
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50684437.html
There's gotta be more than one theory to run the bazaar -- 404 Blog Not Found 2006年11月12日
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/50685716.html
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関連リンク追記 1/13
■[雑感]嫌儲の話。 --- 煩悩是道場
http://d.hatena.ne.jp/ululun/20080113/1200156272#tb
 
話の中身は全然違うけど、問題意識の本質は近いような気がする