chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

MIAUのよく考えられたパブリックコメント

 
文化庁の「Blu-ray Disc関連機器及び媒体を補償金制度の対象に追加する政令改正」へのパブリックコメント --- MIAU
http://miau.jp/1236574156.phtml
 
すばらしい力作なのに、イマイチ、はてな村やその他での反応が薄いみたいなので、支援エントリ挙げときます。
 

補償金の規定を著作権法から外し、純粋に家電メーカーと権利者団体との契約上の取引とすべきである。また補償金の負担者を消費者ではなく、家電メーカーとすることで、2業者間のビジネススキームによる速やかな決着を促進すべきである。
http://miau.jp/1236574156.phtml から抜粋

 
このシンプルな結論、すばらしい。エレガント。こうあるべき。以下、そう考える理由。
 
まず、すばらしいのは、補償金の議論をBlu-rayだけの話に限定していないこと。DVDとかCDとかカセットとか全部ぜんぶぜーーーーんぶひっくるめて、補償金の話を「家電メーカー」と「権利者団体」の2業者間の契約上の取引問題に格下げしようと言っている。ここ、うっかり読み飛ばすとBlu-rayだけの話と勘違いするかもしれないけど、非常に重要なポイントですよ。
 
 
2業者間の契約とすることで、単に「家電メーカー」→「権利者団体」へのお金の流れの話がシンプルになるというだけでなく、もうひとつ重要なことが可能になります。それはつまり2業者間で合意さえ取れれば、逆の流れ、「権利者団体」→「家電メーカー」というお金の流れだって有り得ることになる。これは従来の補償金の枠組みでは不可能だった。
 
権利者側が金がねぇから、もっとよこせっつってんのに、その逆は有り得ないって? ・・・いやいや、そんなことはない。家電メーカーが頑なに補償金を拒む理由の1つはここにある。
 
家電製品の寿命は、科学技術の進歩により一昔前より格段に伸びた。DVDプレーヤなんか、一度買ったらよっぽどDVDを毎日見る人でもないかぎり、5年ぐらいは普通に使える。使い方によっては10年以上使える場合も珍しくないだろう。この間、家電メーカはDVDプレーやを販売した1回だけしか利益を得ることができない。これに対して、コンテンツ制作者側はDVDを作って少しづつ売っていけば、商売を続けることができる。もっとも、コンテンツ制作はとてもリスキーな商売だから、新作を作っただけで収益をあげられるとは限らないのだけど、一方では膨大なコンテンツの資産があるわけで、それを細々と売ったりレンタルしていったりするだけでも、少なくともその間1円も入らない家電メーカよりは稼げていることは間違いない。
 
自分たちの作ったDVDプレーヤの買い替え需要がはるか先なのに、でもその間、家電メーカは何かを作って売って食いしのがなければならない。DVDプレーヤの機能だけでは台湾や中国製の廉価製品に押されてちっとも儲からない。そもそもDVDは、開発費の元を取る前に台湾・中国製の廉価品が出回ってしまったために、国内の企業が開発費を回収できてないんじゃないかという話もあるぐらいなのよ。そこでしょうがないから血の汗のにじむ思いで需要があるかどうかもわからないHD-DVDBlu-rayを作らざるをえなかったという側面もあるわけ。HD-DVDはポシャっちゃったけどさ。 そこでさー、昔のコンテンツをDVDに焼きなおすだけでぬくぬくとおいしい商売してきた連中が、「Blu-rayでも補償金よこせ」。 冷静に考えて、これはちょっと待てよと。
 
例えば、家庭用ゲーム機。ゲーム機というのはハード単体ではほとんど利益が出ないような低価格で販売される。PS3が当初は大赤字で販売された話なんかは有名だよね。で、どこで収益をあげているかというと、ゲームのソフトの方にロイヤリティが乗っていて、それがハードウエアメーカ側に流れている訳。つまりここでは「ソフトメーカ」→「ハードメーカ」の方向にお金が流れている。映画や音楽とは逆だという点に注目してくださいね。なぜこの体制を保つことが可能かと言うと、もし「ソフトの違法コピー」が発覚すると、これはソフトメーカーとハードメーカーの両方にとって目に見える形での損失になる。利害が一致するわけですね。なので、ソフトメーカーとハードメーカーの両者が団結して違法コピー対策に取り組むことが非常にスムーズに進むわけです。もっとも、このロイヤリティーが高すぎると言う不満はソフトメーカ側には常にあるようですが、これは2社間でなんとかしてもらう話で、文化庁がしゃしゃり出てくるような筋合いのものではない。
 
これに対して、これまでの「録音・録画機メーカ」と「コンテンツ製作者」の間のお金の流れと言うのは、上の例と逆でしたし、違法コピーに関する利害が一致しません。録音・録画機や空ディスクを売れば売るほど儲かる家電メーカーと、それが売れれば売れるほど儲からない(と考えている)権利者団体は、勢いケンカ腰にならざるをえず、ちっとも建設的な歩み寄りができずにこのザマだったわけです。
 
消費者としては、ぶっちゃけどっちでもいいんですよ。そんなことは。
 
お金の流れが「ソフトメーカ」→「ハードメーカ」だろうが、「ハードメーカ」→「ソフトメーカ」だろうがどっちでもいい。良いハードと良いソフトが安く継続的に供給してもらえれば幸せなのです。そのためにはどういうシステムが望ましいのか、2業社間で話し合って考えて決めてもらえばいいじゃないですか。
 
個人的には、どちらかといえば、自分がハード屋ということもあり、ゲーム機のように「権利者団体」→「家電メーカー」というロイヤリティのあり方を音楽や映画コンテンツでも真似たほうが、総合的にはうまくいくんじゃないかと考えます。違法コピーはできなくなるだろうけど、それって当たり前の話じゃないですか。現に家庭用ゲーム機では当たり前なわけですし。お金の流れの問題については、大資本の家電メーカと弱小資本のコンテンツ制作者側との力関係を考えたときに、従来どおり「家電メーカー」→「権利者団体」にお金が流れた方が、うまくお金が回って業界が活性化するのかもしれませんが。でもそれって、もし将来、買い替え需要が無くて潰れかけになった家電メーカと大資本の権利者団体、という力関係になっちゃたりしちゃったりする可能性も無い訳じゃなく、その場合でもそのまま固定ってのはおかしいよね? つまり、本質的に資本の大小とか業界の力関係で、妥当なお金の流れのというのが決まってくる問題なんですよね。ここに文化庁が出てくる筋合いのものでもなかろうと。2業社間で話し合って決めてくれと。至極真っ当。エレガント。すばらしい。
 
 

 
 
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補償金「文化庁に調整能力なし」「メーカーと権利者が直接取引を」 MIAUが意見 --- ITmedia
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0903/10/news064.html