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「成長こそが、すべての解なのだ。」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20100917/216290/
こういう言説は耳にタコが出来そうなくらいだが、具体的にここでいう成長とは、何がどうなることなのか、需要不足とは、何がどうなっていることなのか。
日常生活に必要な物やサービスは、既にほとんど事足りている。それをさらに成長させようと言うのならば、将来に向けた展望というのが不可欠と思われる。と、ここで、そういえば、今の日本には「将来に向けた展望」なんていうものが不足しているんじゃないか、と思い当たる。
将来に向けた展望がない→魅力的な投資が無い→需要不足
という流れ。確かに、「将来に向けた展望がない」なんていうのは、不健全な状態だ。
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例えば、宅急便を完全自動化するような大規模インフラの整備をすると仮定してみよう。
人が運転する自動車と自動運転する自動車が混在すると、事故が起こったとき面倒なので、自動宅急便の自動運転車両専用の道路を日本中に作る。既存の道路を走れる自動運転車両というと非常にハードルが高いが、自動運転車両専用の道路を作るという話なら、技術的には大した問題はない。が、そんなものを大金をはたいて人々が欲しがるだろうか?どうも、日本の将来像はそんな所にあるのでは無い気がするね。
では、老人ホームや独居老人の問題。高画質高精細な大画面で、孫の家とおばぁちゃんの家を相互にいつでも生中継。場合によっちゃARを駆使して仮想現実でおばあちゃんと会えちゃうとか。これを日本中で皆でやろうとすると、これも莫大な投資が必要。 でもやっぱりここでも、「そんなもの、みんな欲しがるの?」という疑問が。
話を変えよう。人気のニコ生。枠を増やしても増やしても順番待ちが出る状況。
http://nicolive_wakusu.b72.in/
田舎に行けば、ニコ生なんて知らない人がいくらでも居る状況でこれ。積極的に宣伝&投資すれば、どう考えてもまだまだ伸びる余地がある。おそらくサーバーだけの問題じゃなくて、全国的なトラフィック量の問題もあって、これ以上の対応にはお金がかかりすぎるのかもしれない。けど、こういう所にこそ、余ったお金を回すべきなのに、お金が流れない状況は健全じゃないよね。ここには1つ、成長の余力があるね。
さらに話を変えて。ソフトウェア産業やコンテンツ産業の違法コピーの問題。これは確かに成長のネックになってる。この話は根が深いのでやめとく。
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先日もネタにした「心の支えを金で買えるか問題」。結論からいうと、これは倫理的に間違っている。が、これ以上の経済成長を、ということを考えると、どうもそういう領域に踏み込まざるをえないような気がしてくる。
結婚する人が減り、専業主婦が減る要因の1つには、専業主婦の仕事が金銭評価されず、じゃぁ共働きが良いよね、→それなら別に我慢してまで同居する必要もないよね、→同居しないなら結婚する必要もないよね・・・というような、経済的な要因というのは有ると感じている。これが経済成長に寄与したかというと、短期的には寄与していることは間違いない。専業主婦の居る夫婦より、男女が別々に働いて別々に住んで別々に生計を立てる方が、出入するお金の絶対金額は大きくなるからだ。「家庭を核にして成り立つ社会」から「生涯独居する男女で成り立つ社会」へと社会構造を変化させることで、見かけ上の経済成長を遂げることが可能だった。ただし、これには先がない。
歴史的に見ると、「生涯独居する男女で成り立つ社会」なんていうものには前例が無い。ついでにいうと、老後の「国民皆年金」なんていうのも人類史上始まって以来の壮大な社会実験の渦中にある。普通に考えれば、こんな社会は長くは続かない。そんなに人間は賢くない。成長成長と煽るより、崩壊に向けた前準備を始めるのが懸命なのではないかと、どうしても思えてしまう。