chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

ヤマハの自主制作コンテンツ出版管理機構の話

 
ネタ元
VOCALOIDの音楽出版社 (株)自主制作コンテンツ出版管理機構
http://www.ugc-pub.com/
 
天下のヤマハがやる、ということで、気になる動きだよな。
HPを見て解ることは

会員のクリエイターのみなさまからお預かりしたコンテンツの管理状態をWebサイト上で可視化できるようDBを設計します。
http://www.ugc-pub.com/?page_id=8

非会員は対象外ってことね。
 

当機構は、音楽出版社をベースとしています。
(中略)
1.VOCALOID-P CLUB
2.レーベル機能
3.段階的な管理形態
http://www.ugc-pub.com/?page_id=10

 
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で、以下は個人的な想像とか希望とか。
 
ぶっちゃけていえば、VOCALOIDのソフトウェアは売り切りで、商売として美味しくないので、売った後の商売にも参入したい、という意思表示なのかな、というふうに見える。いや、もっと志は高いのだろうと思うけど、志の高い部分の具体的な話は、まだ何も見えない。株式会社である以上、経費持ち出しでボカロ界の便利屋さんになりますよという話でもなさそうだし。
 
ヤマハがこういうビジネスに参入するという決断をするに至った背景について考えると、1つには今のボカロが一過性のブームではなく、今後5年とか10年とかいう時間軸でみて、ビジネスになりそうだ、と判断したという事なんだろうと思う。もし一過性のブームと見ているなら、「ブームが去ったら会社も精算します」なんていうんじゃ、カッコつかないじゃない。従業員抱えてビジネスするとなれば、それなりに中長期的なビジョンというのは必要不可欠なはずで、それが見通せる状況になったんだろう。
 
楽観的な予測としては、今、中高生でボカロファンになってくれている人のうちの一定割合の人が、もし5年後、10年後もファンで居てくれたなら、その時は社会人として就職して自分で稼ぐようになっているので、ボカロの音楽コンテンツ購入やコンサートに、より積極的にお金を使ってくれるようになるのではないか、という期待が持てる。すなわち、今の中高生が成長するのと一緒に、ボカロビジネスも成長していくのではないか、という前提でビジネス戦略を立てるならば、その第一歩をして「(株)自主制作コンテンツ出版管理機構」なるものを作るという判断は悪くないと思う。
 
(もっとも、今から5年前に、いまのボカロの状況なんて全く予測不能だった訳で、ということはつまり、逆に言えば、5年後は5年後で、今の状況からはまったく予想不能な状況になっている可能性だってある、という事も忘れちゃいけない。)
 
今でさえ素人の作った作品の著作権問題というのは非常に混沌としていて、それをさらに5年も10年も、なすがままに放置しておいたら、色々と禍根を残すのではないか、という懸念は正しいと思う。ただし、その対策をすることで制作サイドとして金銭的メリットがあるのは、TOP人気のボカロPから最底辺のPまでのうち、せいぜい上位10%か、よっぽど多めに見ても20%ぐらいじゃないのかな。
 
このうち、本気で専業の音楽家・ミュージシャンとしてガチプロになるつもりのPは、何だかんだ言ってもJASRACの世話になるのがメリット(利益)が大きいと思われるので、「(株)自主制作コンテンツ出版管理機構」なるものの世話になる人は少ないんじゃないか。とすると、この時点でもう、最初から苦戦を強いられることが目に見えている気がする。
 
残りの、あくまで「自主制作コンテンツ」として、趣味でマイペースに音楽制作をしているPを山ほど集めて、こつこつ便利屋的な仕事をしますよ、というのなら、それも有り難いんだが、ぶっちゃけ天下のヤマハがそんな事を本気でやるとも思えないんだよなぁ。どうなんだろ。
 
ユーザーサイドの勝手な要望としては、たとえば10年後のコンサートで底辺のボカロPの曲を使う際に、著作権で無用なトラブルを起こすことは避けたいので、「(株)自主制作コンテンツ出版管理機構に一括して連絡して、所定のお金を払うか何かすれば全部万事OK!」なんていうことになるなら有り難いのだが、「非会員は対象外」って言われちゃったら、いきなり利用価値激減だよね。こういう大げさな名前をつけた以上、それはもう意地でも原則全部面倒みますよって言ってくれないと、「面倒くさいものがまた1個増えたなぁ」という事実だけで終わってしまう気がする。
 
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改めて言うまでもない事だけど、ガチプロと違って、アマチュアでマイペースに音楽やってる人というのは、そもそも著作権ビシネスなんて考えてない。著作権でなにか揉めた時に、それがお金で解決できると思ったら大間違いだと思う。今までアマチュアだから趣味だから、なぁなぁで済んでた話を、今さら「お金儲けのために管理します」って言われた日には、お金じゃ片付かない問題が噴出すると思うんだよな。そりゃもうパンドラの箱を開けたかのように。誰かの曲が誰かの曲に似てるだとか、パクリ疑惑とか、マッシュアップだとかそれは違うとか、そんなのもう、キリが無い。そんなお金にならない話に本気で向き合う気があるのかと問いたい。「面倒くさいものがまた1個増えたなぁ」という印象を持ってしまうのはそのため。
 
で、結局、著作権ビシネスで生き残れるのは、そういうトラブルを乗り越えられるだけの精神力を持った人達ということになり、それってつまりプロなんじゃないの。