chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

食傷気味なTPPの話ですが

 
TPP をめぐる議論の間違い 東京大学 鈴木宣弘
http://tpp.main.jp/home/wp-content/uploads/d58e252c5ea75e0feb1ae7c3d802d9f7.pdf
 
色々論点はあるのだが、やっぱ一番のキモはここだと思うんだよな。
7ページ目から引用

まず、2008 年の世界食料危機は、干ばつによる不作の影響よりも、むしろ人災だったということを忘れてはならない。特に米国の食料戦略の影響であったということを把握しておく必要がある。
米国が自由貿易を推進し、関税を下げさせてきたことによって、穀物を輸入に頼る国が増えてきた。
一方、米国には、トウモロコシなどの穀物農家の手取りを確保しつつ世界に安く輸出するための手厚い差額補てん制度があるが、その財政負担が苦しくなってきたので、何か穀物価格高騰につなげられるキッカケはないかと材料を探していた。そうした中、国際的なテロ事件や原油高騰を受けて、原油の中東依存軽減とエネルギー自給率向上が必要だというのを大義名分としてバイオ燃料推進政策を開始し、見事に穀物価格のつり上げにつなげた。
トウモロコシの価格の高騰で、日本の畜産も非常に大変だったが、メキシコなどは主食がトウモロコシだから、暴動なども起こる非常事態となった。メキシコでは、NAFTA北米自由貿易協定)によってトウモロコシ関税を撤廃したので国内生産が激減してしまったが、米国から買えばいいと思っていたところ、価格暴騰で買えなくなってしまった。
また、ハイチでは、IMF(国際通貨基金)の融資条件として、1995 年に、米国からコメ関税の 3%までの引き下げを約束させられ、コメ生産が大幅に減少し、コメ輸入に頼る構造になっていたところに、2008 年のコメ輸出規制で、死者まで出ることになった。TPP に日本が参加すれば、これは他人事ではなくなる。米国の勝手な都合で世界の人々の命が振り回されたと言っても過言ではないかもしれない。
米国の食料戦略の一番の標的は、日本だとも言われてきた。

ブッシュ前大統領も、農業関係者への演説では日本を皮肉るような話をよくしていた。「食料自給はナショナルセキュリテイの問題だ。皆さんのおかげでそれが常に保たれている米国はなんとありがたいことか。それにひきかえ、食料自給できない国を想像できるか。それは国際的圧力と危険にさらされている国だ。」という感じである

 
日本には塩漬けの米ドルがあるから、一時的な穀物価格暴騰ぐらいは何でもないかもしれないが、だからといって札ビラで国際的に不足する穀物を買い漁るようなことをすれば、貧しい国からの批判の矛先は、日本にも向けられることになるだろう。食べ物の恨みは怖いのだ。
 
参考:
図録穀物等の国際価格の推移
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4710.html
 
もういっちょ
輸入統計品目表(実行関税率表)実行関税率表(2011年4月版) 第2部 植物性生産品 第10類 穀物
http://www.customs.go.jp/tariff/2011_4/data/i201104j_10.htm
この表を見ると、米の関税率700%などという数字は書かれておらず、402円/kgで固定となっている。
国内で流通しているお米は、ノンブランド品で250円/kgぐらいから、コシヒカリの安いもので450円/kg、高いもので600円/kgとか700円/kgとか。
関税が原価にかかわらず重量で決まるということは、元が0円でも402円/kg以下にはならないということ。円高の恩恵がないというのは、文句の1つも言いたくなる所ではあるかな。高品質なコシヒカリのような高付加価値なお米を安く作って競争するのなら、相対的に税率は下がるので、輸入米にも可能性が無い訳ではない。
700%という数字は、輸入米の価格が57円/kgぐらいの時にのみあてはまる話になる。国際価格の推移を見ると0.6ドル/kg(46.8円/kg)ぐらいなので、現在の名目上は700%より税率が高いことになる。ただし、0.6ドルのお米というのは長粒米が主だと思われるので、日本で主に食されている品種に限れば、国際価格は多少異なるだろう。
しかしそれにしては、amazon USAで小売されている米の値段をいくつか換算してみたが 200円/kg前後の物が多い。安いの探しても、150円/kgぐらい。確かに多少は安いが、そんなに劇的に安くなるという訳でも無さそうに見える。穀物価格が暴騰すれば吹っ飛びうる程度の差だ。