chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

空洞化と窮乏化の話

 
ネタ元:
「空洞化」が足りない --- 池田信夫blog part2
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51753831.html

TPPをめぐる問題と非問題 --- 池田信夫blog part2
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51753562.html

むしろ日本は空洞化が足りない。

このようなグローバル化によって企業収益は上がるが、国内の単純労働の賃金は下がる。富が資本家に集中する、マルクス的な「窮乏化」が起こるのだ。これはライシュやスペンスなど、多くの経済学者が指摘する現実である。私の知るかぎり、これを止める政策は鎖国以外にはない。これをどうするかが、21世紀の最大の問題の一つだろう。

 
ふむ。
 
まぁ、正直な話なんだろうと思う。わざわざこういう火に油を注ぐような発言を避ける人が多い中、批判が集まることを承知でこういうことを堂々と述べる人が居るというのは、悪いことではないのだろう。
 
好意的に解釈すれば、先進国で多少窮乏化が進んでも、それ以上に発展途上国が豊かになるんだから全体としては良いことだ、という考え方もアリなのかもしれない。
 
ただ、TPPの話を別としても、納得行かない部分がある。
 
いわゆる「単純労働」というのは、国際化だけではなく「自動化」によっても、どんどん減少していく方向にある。彼らの話には自動化の効用の話が抜けている。こういう状況下で海外に工場を新設するケースとしては次の2通りがある。
 
(a)簡素な工場を建て、あえて自動化をせず、大勢の労働者を雇って生産する。
(b)十分自動化が進んだ設備を途上国に移設または新設し、さらにコストダウンする。
 
(a)の場合、人件費が上がればその工場は閉鎖され、さらに賃金の安い国に移転する。焼畑農業のような方式であり、労働者の賃金は一定額以上には成り得ない。
(b)の場合、もともと国内でもやっていけるレベルに自動化されているものを、かわいた雑巾を絞るかの如く、さらにコストダウンを追求するという話である。この場合、多少人件費が変動したからといって、おいそれと工場を移転できない。設備の移転費用がかかるし、オペレータの教育にも時間がかかるからだ。したがって、労働者の習熟度に伴って給与を上げることが可能。ただし、もともと自動化が進んでいるので、雇う人数は多くない。少数の労働者の収入が若干上がるだけである。
 
とすると、海外投資によってもたらされる途上国の求人というのも、これまた「大量の低賃金労働者」と「少数のエリート」ということになる。つまるところ、海外投資によって途上国全体がレベルアップして先進国の仲間入りをする、などというのは、一筋縄では行かない話となる。
真に途上国の発展を願うならば、大切なのは途上国の自己資本形成と人材育成であると思われる。これは「海外投資をするかしないか」とは全く別次元の話であり、「海外投資さえすれば両者がWin-Winになれるのだ」とでもいうかのような話は、私には胡散臭く思える。途上国の発展は海外投資に頼るべきではなく、まず一次産業を合理化すること、一次産品の輸出で稼げるようになること、先進国がフェアな価格で取引をすること、そして自己資本の形成と人材育成を行なうことが不可欠で、そこで先進国が手助けすべきは人材育成とフェアな価格での取引という部分だと考える。
 
賃金が安いだけの比較優位というのは、労働者の立場が弱いことに漬け込んでいるだけじゃないのか。
 
昔の日本を考えてみればいい。もし、昔の日本が、外資のやりたいようにやりまくられていたら、果たして今の日本があっただろうか? 成功した台湾にしても韓国にしても、国の発展には自己資本形成と人材育成の話は欠かせなかったはずだ。
 
「フェアな取引」という点に関して言えば、東南アジア産の米の関税を引き下げるという処置はあってもよいと思う。 アメリカ産の穀物は、もともと補助金漬けなんだからして今のままでもよかろう。