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これについて、「中国人は合理主義が徹底しているから」なんていう言説があるが、そんな単純じゃないだろう、という話。
国の中が、カード決済やスマホ決済ばかりになったら、誰が喜ぶだろうか?
・中国の場合、そもそも現金(物理)が不足していた可能性
現金の現物が不足するせいで経済が停滞するなどと言う事は今の日本では考えられないが、中国のように国土が広く、人口も多く、経済成長著しい、となれば、そういう状況は起こりうる。カード決済やスマホ決済は、その対策として有効。
・金融危機に於いて、取り付け騒ぎのリスクを根本的に解消できる。
これ、でかいでしょ。北京オリンピックの後、中国ではバブルが崩壊しかけて、銀行倒産→大不況 に陥る直前の状況まで行った。うまく経済政策をかじ取りしてその難をのがれたが、肝を冷やした金融関係者は多かったはずだ。
預金と言うのは、原則的には、預金者がいつでもいくらでも引き出す事ができる。しかし、国じゅうの人が一斉に銀行におしかけて預金を引き出そうとする、いわゆる取り付け騒ぎが起こると、銀行はたちまち経営危機に陥る。現金決済の社会における銀行は、常に取り付け騒ぎのリスクを抱えている存在なのだ。
これが、現金が使われなくなるとどう変わるか。預金をおろしても、それを使う機会が世の中に無いのだから、預金を引き出す動機がそもそも人々に無くなる。銀行口座の上で数字が動くだけならば、銀行が抱えている資産の総量はほとんど変わらない。銀行は、取り付け騒ぎのリスクから解放されるのだ。このメリットは大きい。銀行が全力でカード決済やスマホ決済の仕組みを支援するのに十分な理由になるだろう。
・現金が無くなることで、脱税が困難になり、財政が潤う。
政治面から見ても、脱現金化はメリットが大きい。今まで現金で行われていたような裏取引きは、今の中国では昔よりずっと困難になっているはずだ。
政治的にも、脱現金化を推進するに足る動機があるのだ。
金融機関と政治が足並みをそろえるなら、脱現金化は簡単な話だ。つまりそういうことだ。
日本でも、金融機関と政治が足並みをそろえるなら、数年で今の中国の様な状況に持っていく事は可能だと思われる。
問題は、その足並みが、なかなか、そろわないんだなぁ。
あと、日本特有の問題としては、大震災などの災害に備えるために、現金がある程度必要、という事情がある。災害で、電気とインターネット、電話回線などのインフラが途絶すれば、その間、カード決済もスマホ決済もつかえなくなることが予想できる訳だが、その間、被災地で一切お金が使えないというのでは困ってしまう。現金が有れば、とりあえずインフラ復旧までの食費をまかなうぐらいは何とかなるだろう。