chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

2019年の田舎の経済

久々に実家に帰ってみて、今、この村の現在の経済はどうやって回っているんだろうと考えてみた。
 
まともな生活ができているのは、公務員か、土建屋の仕事をしている人だけのようにみえる。
残りは、年金で生活する老人だ。少ない年金でぎりぎりのところで生活している。その老人が農業をやっている。限界集落の農業は、年金無くしては成り立たない。もはや産業としての体をなしていない。
小学校は随分前に廃校になった。
バスは、学校がある日のみ、朝に1本、夕方に1本あるのみ。休日はバスすらもない。こんな村に子供が居ることに驚くが、離婚して生活に困って子供を連れて実家に戻って来たシングルマザーが多いという。
 
こんな村でも、40年前は1学年10人ほどの子供が居たのだ。その前はもっと多くの子供が居た。驚くべきことだ。それだけの数の若い夫婦がこの村に居たという事だ。
1970年代はまだ、こういう辺鄙な田舎でも、農業がそれなりに産業として成り立っていたんだよな。若い夫婦が希望を失わずに農業に取り組む事ができる時代が有ったのだ。1980年代になると、農業の収入が激減して、産業として成り立たなくなり、誰もあとを継がなくなった。1970年代に20代だった人が現在70歳を超え、最後の農民としてほそぼそと農業をやっている。あと10年したら、耕作される田畑はほとんど残っていないだろう。
 
この村の人々の収入源は、公務員か土建屋年金生活者。公務員の給料は税金だし、田舎の土建屋の仕事なんて公共事業しかないからやっぱり税金だ。年金はまぁ自分で納めてきた結果ではあるのだが、国の制度であるからこれも税金のようなものだ。つまりほとんど税金のおこぼれでなりたっているのがいまの限界集落の実態と言わざるを得ない。国の財政が厳しくなるのも当たり前だ。
 
 
他人事のように言っている場合ではないのだが、色々考えると、田舎で生まれた団塊Jrというのは、なかなか面白い時代の変遷の中を生きてきたのだなと思う。
 
1970年当時、まだ蛍光灯は普及しておらず電球で、TVは白黒で、真空管だった。道路は舗装されていないか、コンクリートだった。2車線の道路なんてほとんど無かった。
 
1970年代の中ごろに、急速に蛍光灯が普及し、TVはカラーになり、トランジスタになった。アイドルブームはカラーテレビなくしては成り立たなかったと思う。アイドルブームは1980年代まで続く。道路の工事も本格化して、いつもどこかが工事中だった。アスファルト舗装が普及した。田舎に軽トラが広く普及した。都市部の復興が本格的に進み、あちこちでぼこぼこビルが建ち始めた。都市を形成しているビルのほとんどは1970年以降のものである。それ以前に建築されたビルは非常に少ない。1970年と1980年では都市の景観がまったく変わってしまうほどの発展ぶりだった。
 
つまり1970年代にはまだ農村に若い夫婦がたくさん居た、という事実の裏には、1970年初頭には都市部の復興がまだ十分には進んでいなかった、という状況があり、裏表だったという事に気が付く。都市部の復興がすっかり終わった1980年代になると、田舎で農業を継ぐ人は激減する。
 
1980年代にはゲーム機やパソコンが普及。子供の遊び方が変わってしまう。外で遊ぶ子供が減る。
1980年代後半にはエロ雑誌が多数刊行されて団塊Jrのジュニアを慰めた。エロビデオの入手も容易になった。
そして1990年代、就職氷河期。それ以降の話はネットでたくさん語られてきているので繰り返す必要は無かろう。就職に失敗した人は結婚もできず、子供ももてず、現在にいたると。
 

1970年代80年代がなぜ好景気だったかという話と、なぜその後に失われた30年が来たのかってのは、地続きの話であるはずなんだが、そこまで踏み込んでいる論は少ない。1970年代の好景気を振り返ると、それがかなり特殊事情によって生じた状況だったのであって、継続可能ではなかったのだということにすぐに気がつくだろう。しかしそれを認めてしまうと、失われた30年の批判の根拠を失う。なのでだれもそこに踏み込まない。これも不誠実な話だよな。
 
 
1970年代にうまく経済が回っていた理由の1つは、農村部の産品がちゃんと利益の出る価格で都市部で販売され、同時に、都市部で生産された工業生産物が田舎の人々に購入されるという循環がうまく回っていたということがあるよな。あと、円安だったので日本の工業生産物が海外で良く売れたということもある。1980年代になって貿易摩擦が深刻になり、農産物の輸入を増やした結果、日本の農村がダメージを受けた訳だが、全体主義の中で「それはしょうがないこと」とされてしまった。農業にビジネス的な魅力が無くなり、本来なら農業を継ぐべきだった人たちが農業を継がず、しかし都市部に出てみたところで就職氷河期でろくな就職先も無く、以下略。

・・・というようなことをずっとひもといて行くと、農業をこのまま廃れるにまかせちゃいかんのじゃないかと思う訳だが、これは単に人を移動させるだけでは解決しない。産業として成り立たせるには農産物の価格を正常化させなければならない。が、政治や経済の主導権を持つ都市部の人がそれに協力してくれる可能性は低い。クラッシュするまで放置されつづけるのだろう。