chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

マクベスチャート解説

動画ネタ用原稿。
 
ここ1年ぐらいの間に、だいぶ知られるようになってきた感じがするLightRoomですが、これを強力にサポートしてくれるツールとして、今回は「マクベスチャート」というのを紹介したいと思います。
 
名前は知らなくても、見たことぐらいはあるかもしれません。こういうものです。
(画像挿入)
 
マクベスチャートというのは元々はアメリカの映画の制作現場での必要性から生まれたものです。こういうカラーチャートで色が管理されるようになる前は、たとえばこういう問題がありました。
・フィルムの品質のバラつきにより、意図した色合いにならない事がある。
・映画の制作では、似たシーンをまとめて撮影しておき、後で編集して入れ替えたりする。この時、色の管理をしていないと、前後のシーンと色合いが違ってしまって、非常に不自然なカットのつなぎになってしまう。(アマチュアの自主製作映画では、しばしばこの手の問題が見られる。色管理をしてない為。)スタジオで撮影したシーンと、屋外で撮影したシーンをうまく繋げる場合などは特に、照明条件が全く異なるので、カンや経験だけでは補正しきれない。
・マスターフィルムから、映画館に配布するフィルムへのコピーにおいて、色合いが正しくコピーされているかどうか解らない。
 
こういう場面で、色の管理が必要となり、その為の最も基本的なツールの1つとして、こういうチャートが利用されてきました。既に50年以上の長い歴史があります。
しかし、写真といえば銀塩フィルムしか無かった時代には、アマチュアがこれを手に入れても、活用の方法がありませんでした。マクベスチャートを銀塩写真で撮ってみても、「あぁ、このフィルムは紫が綺麗に出るんだな」とか、見た目で傾向を知るのに使う程度。自分で現像するならば使い道があるかもしれませんが、ご存知の人も多いと思いますがカラー写真の現像というのはとてもむずかしくて、アマチュアの手の出せるようなものではなかったんですよね。
 
ところが!
 
今や、デジカメの時代じゃないですか。デジカメでこのマクベスチャートを撮影して、LightRoomに持ってくると、昔はプロのカラー映画でしか出来なかったような緻密な色管理・色再現が可能になるんです。この凄さ、解ってもらえますかね。銀塩写真時代には何百万円も投資した上に専門的な勉強と訓練を積まなければ絶望的に不可能だったことが、今や、アマチュアでも手が出せるようになったんです。本当に画期的なこと。ちなみに、このマクベスチャート、A4サイズのものが12000円ぐらい。LightRoomが定価だと17,000円ぐらい、合わせて3万円弱ですか。高い?でも、プロでもこれを使ってると思ったら、安くないですかね。 少なくとも、10万円のカメラを1台だけ買うよりは、5万円のカメラと、LightRoomと、カラーチェッカーを買ったほうが、綺麗な写真が出来る。写真の趣味に10万円以上使うような人なら、ちょっと予算配分を考えて、検討してみるべきと思いますね。
 
ただしコストについては、予め注意点を挙げておくと、このカラーチェッカーには寿命があります。だいたい2〜3年で買い換えることが推奨されてます。経時変化で色が微妙に変わってきちゃうんですね。それから当然ながら汚れたカラーチェッカーは使えないので、屋外で使っていて雨で濡らしたとか、そういう場合は買い替えが必要なので、そういうもんだと思って下さい。
 
という事で、前フリを終わりまして、実際の使用例を紹介したいと思います。題材にするのは、こちらの写真。
(写真を表示)
背景の緑が、ちょっと元気がない感じで、これ、撮影した時の印象では、もっと若々しい緑だった気がするんですよね。それから、肌色もちょっとくすんでます。LightRoomで見た目イイカンジに調整するのは簡単なんですが、そうすると、どうしても「自分好みの肌色」になっちゃうじゃないですかw。これが、たくさんの人の写真を撮った場合に問題になってくるんですよね。ぶっちゃけ、全員同じ肌色になっちゃうww。そんなわけないだろwwwっていう。
という訳で、やっぱり、基本はきちんと色管理して、色再現することを、まずは目指したほうがイイ。もちろん、その上で、演出するっていうのはアリです。でも、いきなり演出するんじゃなくて、まずは物理的に、機械的に、限界まで正しい色を目指す。そこまで行ったら、次に、自分の個性を発揮するような色合いを作りこむ。こういう手順を踏むことで、撮影条件の違いに左右されずに、「自分のやり方」っていうのをブラッシュアップしていくことができるようになります。これを目指しましょう。
 
マクベスチャートを使った色管理、要するに何をするかというと、マクベスチャートには、それぞれの色に対して、RGBがそれぞれいくらになれば良いか、という解析値が公開されています。これです。
(画面に表示)
(※LightRoomは、デフォルトでは ProphotoRGB という色空間座標で色が示されますが、マクベスチャートに付属している解析値はこれと事なります。DCI-P3が比較的近い模様? この2つは全く異なるので、換算が必ず必要です)
単純に言うと、マクベスチャートをデジカメで撮影して、それをLightRoomに取り込んで、それぞれのマスの色が、この解析値と同じ値になるように、LightRoomの「現像」の調整機能を使って、合わせこんでいくわけです。ただ残念ながら、今のLightRoomでは、この全てのマス目の色全てを完璧に合わせ込むことはできません。マス目は全部で24ありますが、LightRoomでは8色に分解して調整するのでどうしても「あちらを合わすとこちらが合わず」っていう所が出てきます。そこは最終的な効果を見ながら、Bestな状態になるように、優先順位を決めて、合わせこんでいきます。
 
やみくもに合わせていくのは効率が悪いので、「だいたいこうするといい」っていう手順を紹介していきます。
 
(1)まずはグレーチャート
一番下の6色ですね。これの真ん中の2つを合わせます。まずホワイトバランスツールでホワイトバランスを取った上で、62.7%ぐらい、47.8%ぐらいにそれぞれなるように明るさをあわせます。これが出来たらさらにその両隣。78.4%と33.3%。 さらに両端、95.3%と20.4%。
これを合わせるツールとしては、古典的には「トーンカーブ」っていうのを調整して合わせこむのが一般的かと思います。しかしこれ以外にも方法はあって、「露光量」と「コントラスト」をうまく調整する事で、かなりのレベルまで合わせこむ事が出来ます。ほとんどのデジカメで、コントラストを強調する処理がデフォで入ってしまっているので、逆にコントラストを下げてやることで、うまくグレースケールが合うようになる場合が多いですね。
トーンカーブは「露光量」と「コントラスト」で調整しきれない部分・・・一番暗い所と明るい所・・・を最小限調整するにとどめておいた方が、後々吉です。すごく極端な設定にしないと合わないような場合は、後で色々弊害が出てくるので、そこそこの合わせこみで置いておいたほうが無難です。
 
(2)RGB
次に、色の3原色、青、緑、赤をあわせます。これを調整する方法は、LightRoomでは通常の色相・彩度・輝度以外に、「カメラキャリブレーション」の所で色相と彩度については個別に合わせることが可能です。これを使いましょう。ただ、ここには輝度が無いので(各色の輝度のバランスはホワイトラバンスで決まるため)、輝度の調整は通常の輝度調整の機能を使います。
3原色とはいっても、マクベスチャートの3原色は完全な原色ではなくて、微妙に他の要素も混ざってるんですね。これを合わせこんでいきます。Rであれば、GとBが同じぐらいのレベル。Gであれば赤と青が同じぐらいのレベル。BであればRとGが同じぐらいのレベルっていうのがミソです。これを色相を調整してバランスを取ります。さらに彩度を調整すると、メインの色とそれ以外との比率が変わってきます。これでほぼぴったりに合わせる事が出来ます。
 
(3)CMY
次に、印刷物の3原色である、シアン、マゼンダ、イエローを合わせます。これは普通に「色相・彩度・輝度」の調整機能を使って合わせこんでいきます。イエローは肌色への影響があるので重要な色ですね。シアンは調整が難しいです。シアンを合わせようとすると、青や緑も変化してしまって、(2)に戻ってやり直しが必要になります。最終的に予定している写真に余り出てこない色は、割りきって放置して、大事な色を集中して合わせ込む、というようなことも必要かもしれません。経験的には、RGBの青よりもCMYのシアンをきちんと合わせこむ事を重視したほうが、バランスの良い青色が再現できる傾向があるように思います。
 
(4)残りの12色
LightRoomは8色に分解して調整できるので、オレンジと紫は、かなりきっちり合わせ込むことが可能です。特にオレンジは、肌色に関係するので、面倒がらずにきっちり合わせ込むと吉。他の色は、調整すると、RGBとCMYに何らかの影響が出るので適宜(2)(3)を繰り返す必要が出てきます。最終的に、なるべく沢山の色が、理想値に近くなることを目指して下さい。
 
これが完成したら、この設定を、ターゲットとなる写真にコピーします。メニューから・・・こんな感じ。この時、日光や照明等の条件は当然、同じ写真である必要がありますし、シャッター速度や絞り等の条件も、基本、同じである必要があります。全自動だと、勝手に露光条件が変化してしまうので、そのまま設定をコピーしてくるとおかしな写真になりがちです。マクベスチャートを使うときは、露光条件は自分で調整して固定にしたほうが良いですね。 露光条件が違ってしまっている場合でも、明るさやホワイトバランスの基準になるもの、比較できるものが写っていれば、そのRGB値を見て明るさを合わせることができます。 
 
それを行なってみた例がこちら。
(写真 使用前・使用後)
 
注意点としては、色を合わせるためにあんまり無茶な設定をすると、(例えば調整ツマミを右端や左端にもってきている等)結果的には色の繋ぎ目が不自然になったりしてろくな事になりません。そういう場合は、ほどほどの所でバランスを見て下さい。
 
(続く)
(つづく)