だんだん寒くなってきて、冬に本格的に備える時期になってきた。11月初旬はまだ温かくて、昼間は20℃ぐらいあるし、早朝でもまだ10℃以上ある日が多いが、問題はこの先、放射冷却で霜が降りはじめた時の霜対策だ。ほとんどの農作物は霜でやられてしまうので、基本的に霜が降りる時期は、そのままではほとんどまともに花や野菜の育成ができない。
で、その霜対策について調べているんだけど、不織布を1枚かけると地面の温度が2℃上がりますよ、3枚かければ×3で6℃上がりますよ、とか、そんなのばっかりで、原理的・物理的にきちんと放射冷却対策しようという記事や動画が日本語ではほとんど見つけることができなくてイライラする。
いくらでも手間暇がかけられるのなら、話は簡単で、放射冷却で霜が降りそうな夜には、銀色のレスキューシートのようなものをかければ、原理的に放射冷却をかなり抑えることができるはずだ。問題はそのままだと昼間に光が当たらないので、毎日片づけなくてはならない事だ。傘のような構造なら簡単に閉じることができて自動化も可能かもしれない。日傘に高機能なものが出ているし、工夫のしがいはあるかも。
それにしても、実証実験をしている人が居ても良さそうなのに、日本語では検索しても出てこないのだ。しょうがないので自分で試してみるか、となっている所。ダイソーのレスキューシートなら¥110円で買えるし。
実験の効果確認は、確かに面倒だ。温度計の温度は点でしか解らないから、面でどれぐらい効果があるのか見たいよな。となるとサーモグラフィーカメラの安いやつが最近はあるから、そう言うのが使えそうだ。こういうやつ
www.amazon.co.jp
で、農業や家庭菜園でサーモグラフィーカメラを使っている人の動画とかないかな、と思って探すと、これがまた日本語でそういうことをしている動画はほとんどない。温室の暖房の効果確認で使っている事例はあったが、放射冷却の実験でサーモグラフィーカメラを使っているのは大学の実験動画しか見つけられなかった。海外には農業に応用している事例がたくさんある。やべー、遅れてるぞ日本。日本の農業は高齢者ばかりだから、その弊害がこういう所に出るよな。サーモグラフィーカメラは農業の生産性UPに相当貢献できるはずで、将来的には農家には一家に一台レベルに普及しておかしくないレベルのメリットがあるはずなんだが、日本ではほとんどの農家がまだそれに気付いていない。やべー。
放射冷却の原理が解ってないから、冬のマルチングに透明マルチを使っている人がYoutubeで偉そうに講釈してたりする。透明マルチは日光が当たった時に地温を上げる効果があるから、それを狙っているという事は解るんだけど、放射冷却対策としては最悪で、透明なビニールは遠赤外線をほぼ全て通す一方で空気は通さないから、放射冷却で路地と同じように地面が冷え込む上に、それを温めてくれるはずの空気の流れが遮られてしまい、最悪の結果になるはずだ。放射冷却対策としては銀色マルチの方がましなはずなのだが、そういう事をしている人が皆無なのも不可解だ。売られている銀色マルチはどちらかというと灰色なマルチばかりで、放射率は案外高いのかもしれないので、言うほど放射冷却対策にはならないのかもしれないが、その判断のための放射率のデータすら出てこない。アホか。
銀色のレスキューシートをマルチングに使う場合の問題点は、光の反射が良すぎて、たまたま反射レンズのような形状になった時に花や農作物を傷める恐れがある事だ。これは予めあえてしわくちゃにしておくとかすれば対策になるかも。
普通のガラスはビニールと違って、遠赤外線を通さないらしい。ガラスの温室とビニールの温室ではその点で差が出るのだな。ではガラスの方が放射冷却対策になるかというと、冬の自動車のガラスにバリバリに霜が降りることから解る通り、微妙な感じ。遠赤外線を通さない=遠赤外線を吸収してしまうという事なので、遠赤外線視点で見ると黒い物質と同じということになり、ガラス自体はむしろビニールよりも放射冷却の影響を受ける。一方、ビニールは全て通過させてしまうのでもし車のフロントガラスが透明ビニールだったら、ビニールには霜が降りない代わりにダッシュボードに霜が降りるんだろか? そう考えると、地面に霜が降りるのを防ぐ対策としては、ガラス温室というのは有効なのかもしれない。ガラスは氷点下に冷えることになるが、花や農作物にとっては地面や葉っぱが冷えるよりマシかも。
赤外線カットフィルムもちょっと調べてみたけど、価格が高い割に効果が微妙。赤外線をしっかりカットできるものは、可視光もそれなりにカットしてしまう。UVカットだけなら透明度の高いものも有るんだけどな。
光を通し、かつ赤外線を通さない、という物質で、身近なものとしては、案外「水」が使えるんじゃないか。水はいわゆる「可視光」を良く通すが、それ以外の波長の光の透過率はそれほど高くない。放射冷却対策になるかというと、赤外線を通さない≒赤外線を吸収する≒赤外線を放射もする=放射冷却もする、で水が冷えてしまう事には違いが無いのだけれども、水は4℃で比重が最も重くなり、それ以上になるとむしろ軽くなって水面にあがってくる。だから池の水は上から凍ってくるのだね。池の水の表面は凍っても、池の底が凍ってないならばそこは氷点下になっていないということなのだ。これは霜対策に応用できそうだ。水は完全に凍るまでは0℃を維持するので、言い方を変えれば完全に凍るまで0℃以下になるのを防ぐことができる。植物の多くは、 風がなければ0℃ぴったりはギリセーフ(ミネラルが溶け込んでいるので凍る温度がほんのわずか低い)の物が多いはず。
たとえば芽が出たばかりの小さな農作物の周りを、水を入れた4~8本のペットボトルで囲ってやり、上面は赤外線を通さない適当な物で蓋をすれば、朝方の放射冷却で地表面が氷点下になる問題から保護してやることが可能に見える。保護が必要なのは数時間だから、ペットボトルぐらいの水の量でも何とかなる可能性がある。ペットボトル内の水は、凍り始めたとしても上の方からで、下の方は比重の重い4℃ぐらいをしばらく維持してくれることが期待できるし、さらにもう1段階下がって0℃に達したとしても、ペットボトル内の水が完全に凍るより先に朝が来るなら、そういうペットボトルに囲まれたエリアが0℃以下になるのを回避するのに役立つだろう。
昔はバケツに入れた水の表面に朝方氷がはっているのを見ることがあったが、最近はそれも稀だし、氷が張ったとしても表面のごく薄い氷だけだったもんな。