chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

美術品の意味が変わるとき

 
昔、3年間ぐらいだけど、東京で油絵教室に通っていて、その時は絵を習うだけじゃなく都内の美術館もあちこち行った。海外旅行でルーブル、オルセー、オランジェリーなども行った。
 
で、現状の美術品市場の話を聞いて、「嫌だなぁ」と思ったこと。
 
まず、アートで飯を食っていくためには、自分が作った作品が売れなくちゃならない。美術品を買うのはどういう人かといえば、基本、金持ちだ。貧乏人が1点数十万円〜数百万円もする美術品を買うことはできない。
 
その結果、どういう事が起こるか。貧乏人1万人に絶賛される美術品より、金持ち1人に高値で買ってもらえる美術品の方が重要、という話になってしまうのだ。貧乏人としては、とても寂しい話だ。
 
金持ちはどういう理由で、美術品を買い求めるのだろう?。ある程度までの、まっとうな価格のものであれば、本当に趣味で買い求める場合もある。金持ちは美術品について勉強する時間もあるから、それなりに勉強して良いものを買い求めることができる。そこまではまぁ、いい。ある一定以上の価格のものは、将来転売するときの売却益が見込めそうな物を買うことになる。何千万とか何億とかいう価格がつく作品というのは、だいたいそれだ。
 
そういう訳で、「将来値上がりしそうだな」と買い手に思わせ、実際にそのように市場を誘導することが重要になってくる。こうなると、もうゲームだ。高値がつく美術品というのはたいてい1品もので、稀少価値が高いから、有名になればなるほど値段が釣り上がりやすいという構造を持っている。金持ちが安く買ったあと、その絵を宣伝して有名にしてから売りに出す。そういう目論見があるので、美術品が丈夫で長持ちするということも自ずと重要なポイントとなる。
 
逆に言えば、将来値下がりする物を金持ちが買うことはないのだ。今はすごく流行ってるけど数年後には二束三文になるに違いない物、簡単に色あせたり壊れたりしてしまうようなものには、賢い金持ちは手を出さない。
 
この理屈で言うと、Web上のCG作品には美術品としての価値が無い事になる。稀少価値が無く、将来の値上がりが見込めないから。
 
でもさ。「将来値上がりしそうに見える」ということが美術品の価値なの?なんかずれてないかい?
 
嫌だよねこんな話。なんか18世紀の価値観を未だに引きずってる感じ。
 
もし、お金の話さえ絡まないで済むなら、「将来値上がりするか否か」なんていうことを心配する必要はない。今、自分が、あるいは周りの人々が、その作品をどのように見て、どのように感じるのか、という所に意識を集中できる。そこがまず出発点であるべきだと私は考えている。
 
どう考えたって、Web上のCG作品に価値が無いなんてことはありえないんだからさ。
 
おそらく将来、世界の美術史上において無視できない重要なCG作品・CG作品群というのが、Web上で無償公開されているCG作品のなかから見出される時が来るだろう。来ない訳がない。その時こそ、こんな嫌な話とはおさらばだ。今はその前夜であると信じたい。