おばぁちゃんネタ派生。
改めて言うほどのことでもないが、日本はほんの50〜60年前まで、今の水準から考えれば信じられないほど貧しい国だった。それが、現在はこうなった。その間に、所得格差は広がったかもしれないが、昔、最も金銭的に貧困だった人たちの生活水準も、大幅に底上げされた。この点において、経済成長は間違いなく善であり正義だった。
60年前の時点での金持ちの財産を没収して貧しい人たちに再分配したところで、何も根本解決にはならなかっただろう。経済について勉強し、経済発展を遂げることで、始めて社会全体の生活水準の底上げが可能になった。それを予め予見し、先導した人たちの功績はとても大きい。この偉業については、もっと世の中全体で認知され、賞賛されて良いと思う。
しかし、そこで得られた成功体験を元に、現状からさらに飛躍的な経済発展を目指す、という事は、はたして正しい選択枝なのだろうか?
現状、日本において最も低所得な人たちの収入というのは、制度的には大まかに次のいずれかによって保障されている。
(1)最低賃金
(2)年金 (障害者年金等を含む)
(3)生活保護
ここで「あれ?」と思う訳。現状の仕組みでは、GDPが成長したからと言って、これらの支給額が増える仕組みにはなっていない。ベースになるのは物価である。
経済発展の目的の1つが、貧困層の解消であるならば、表面的には、デフレというのも正しい選択肢であるように見える。デフレで生活必需品の物価がどんどん下がってくれれば、最低賃金や年金や生活保護で生活している人の生活レベルは、相対的に改善されるだろう。 インフレやリフレのメリットを主張する場合には、一方ではこういう社会的弱者に対する対応策を並行して主張することが必須だろう。
GDPを伸ばす為の政策という事を考える時、それが低所得層にどういうメリットがあるのか、という視点の無い主張を正当化するのは、私には難しい。
景気が良くなれば、雇用が増えて、今まで生活保護だった人が就職する機会が増えたり、年金生活の人が簡単なアルバイトをしたりする機会が増えるかもしれない。これは解りやすいメリット。最低賃金はどうかというと、円高で海外の労働者との賃金格差が大きく開いている現状では、そう簡単には改善しないかもしれない。
世界規模で見れば、日本企業が海外に進出することで、進出先の地域の雇用環境や景気が改善されて良い効果をもたらすだろう。世界規模で見れば、海外進出が世界の賃金水準のUPに何らかの貢献をしており、貧困の解消に役だっていると考えられる。
国内問題に限って考えるならば、過度な経済成長の弱点というのも考慮する必要があると思う。極限までGDPを膨らまして経済発展した国の生活というものが、どういう状況なのかといえば、それは身の周りのあらゆる物事に値段をつけ、頻繁に売買するような世の中なのだろうと想像できる。それは本当に私達の望む未来なのだろうか? それより、労働環境の改善や、十分な休暇の方が大事なのではないか?
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確かに経済発展は、過去の貧困問題の解消に、非常に大きな役割を果たした。しかし、その方法論そのままで、現状取り残されている貧困層を救えるのかどうか、疑問に思うし、既に貧困状態から脱した人々が、さらなる経済発展を求める理由はいったい何なのか、よく考えなおさなくてはならないと思う。
過去の正義を振りかざすことが、未来においても正義であるとは限らない。