chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

国債残高が増えることの問題点

 
ネタ元:
「アナタは勘違いしている?国の借金のウソ」--- らばQ
http://labaq.com/archives/51753925.html

政府の借金増加は、基本的に民間の貯金増加となるんです。

 
一方、家計貯蓄率は減り続けているのだった。
図録主要国の家計貯蓄率の推移 --- 社会実情データ図録
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4520.html
 
では企業が儲けているのかというと、確かに無借金経営の会社の話をちらほら聞くが、赤字の企業も増加している。
ちょっと古いデータだが
申告企業の約7割が赤字で過去最悪、08年度の会社標本 --- 不景気.com
http://www.fukeiki.com/2010/03/loss-company-2008.html
 
意味がわからない。お金に困っている人が騒ぐ一方で、儲けている人は黙っているのでその実態が見えにくいという事か。
 
「政府の借金増加は、基本的に民間の貯金増加となるんです。」は事実だが、その話の行き着く先として、「だから政府の借金増加は好ましいことなんです」という結論が有りえるのだとすれば、極論すれば税金制度なんていらないという話になるよね。国の財政を100%国債で賄えばいい。国債の償還も国債で行えばいい。国債を買ってくれる人が居る限り、税金なんて不要なんじゃないか。
 
税金が無くなったら、国債を買う人が居なくなるのだろうか。税金制度が有ろうがなかろうが、国債金利がつくというメリットは変わらない。売れ行きが悪いなら金利を上げれば良い。償還はまた国債で賄えばいい。国の信用があるなら問題ないのだろう?
 
国債の買い手のかなりの部分を金融機関が占めるので、可能性としては、例えばもし大規模な取り付け騒ぎが起こると困ったことになる。金融機関が手元の現金を確保するために、保有する国債を市場で大量に売りに出したりすると、国債が暴落しかねない。こうなると、新規に発行する国債の買い手が付かなくなり、国債に頼った財政はたちまち成り立たなくなる。
 
この場合の対処方法としては、取付け騒ぎが収まるまで無制限に中央銀行等が現金を融通し、一時的な自己資本比率の低下を問わないことにして、「取付け騒ぎで銀行を潰すことは絶対にしない。売り浴びせられた国債中央銀行が額面どおりで全部買い取る。」という対応を取ることだ。問題はそれが現実に可能なのかどうかという事だ。先の記事のデータによると、「貯蓄が」850兆円ぐらいあるという事になっている。貯蓄であるからして、全国民が短期間で全てを引き出すことは法律違反ではない。預金封鎖などしようものなら火に油だ。
しかし一方、現実に国内を流通している紙幣等の現金総額は2009年時点で81兆円ほどだという。国家予算より少ないという謎!?。
 
円 (通貨) --- wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%86_(%E9%80%9A%E8%B2%A8)

円の流通高は2009年3月末現在において現金ベースで81兆4,215億円であり、このうち日本銀行が発行する紙幣が76兆8,977億円、財務省が発行する硬貨が4兆5,237億円である[6]。円の通貨流通高とは、現金の総額と捉えることもできる。

 
だから、もし「取付け騒ぎが収まるまで無制限に中央銀行等が現金を融通」しようとすると、最悪、残りの770兆円ぐらいの紙幣を大至急印刷しなければならない事態になる。もしそんな状況になったら、1万円札じゃ印刷が間に合わないので、100万円札とか一千万円札とかが必要になるだろうな。まぁ、物理的に不可能ということでは無いか。
 
そうやって難局を乗り越え、山を超え谷を超え、数十年先に国債残高がはるばる1京円とか1垓円とかいうレベルになったとしよう。国債残高は指数対数的に増える可能性があるので、そんなに遠い未来の話では無いかもしれない。その時国内経済はどういうことになっているだろうか。
 
「政府の借金増加は、基本的に民間の貯金増加となるんです。」という事なら、現状、政府債務の4割増しぐらいが民間貯蓄という比率で推移しているので、国債残高が1垓円になれば民間貯蓄の総額は1.4垓円ぐらいになるという事だ。国民1人あたりにすると、ざっくり平均1億円ぐらいの貯蓄がある計算になる。1億円の貯蓄っつっても、金利が0.3%なら年間30万円か。大した額じゃないな。10垓円になれば1人当り10億円、0.3%金利でも年間300万円という計算。まるでベーシックインカム
 

問題はその時の物価がどういう事になっているかという事だ。「10億円も貯蓄があるなら働かなくていいんじゃね?」とかいう人が増えると、否応なしにインフレになるだろう。輸入品なら安い? いや、皆が働かなくなれば、円も安くなるはずなので、輸入品の値段も上がる事になる。 
逆に言うと、たとえ10億円の預金を全国民が持つことになったとしても、全国民が昔と同じように勤勉に働き続け、昔のままの物価で、昔と同じ金額分だけのお金しか使わないならば、昔と同じ生活が可能だ。(エネルギー問題や食料問題は別の話として。)
 
国債残高や預金残高の大小、それ自体は、市民生活を破壊する元凶ではない。 その金額の大小に人々が惑わされることが問題の本質という事になる。
 
関連:
国の債務を全て返済すれば何が起きるのか --- シェイブテイル日記
http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20120719