chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

1本のネジ

ここに1本のネジがある。
 
その、今目の前にある1本のネジに、どんな歴史があり、どんな英知が込められているか、考えたことがあるかい?
 
まず素材、鉄だ。鉄の歴史、ちょっと調べればすぐに1冊ぐらいの本ができそうだね。
真鍮やステンレスの歴史というのも調べればいろいろあるぞ。
そして表面のさび止め、これもなかなか知恵が必要だ。
昔のネジの表面処理は簡単に剥がれて錆びたもんだが、今のネジは鉄でも簡単には錆びない。
どんな秘密が隠されているんだろうね?
次に加工精度。この小さなネジ山のピッチがどれぐらいの精度でできていると思う?
ネジのピッチは規格で定められていて、ある程度の公差が許容されてはいるんだが、
よほどできの悪いネジでないかぎり、ねじ山あたりミクロンレベルの精度があるぞ。
ドライバーとネジの頭の勘合、これもとても高い精度で、ぴたっとはまってまったくガタが無い。
本当に紙をはさむ隙間もない。このガタがいくらかなんて計るだけでも素人には無理だ。
こんな高精度のネジ、「お前、作ってみろ」なんていわれたらどうするよ。
どこから手をつけたらいいのかということすら皆目見当がつかないだろう?
 
そして、極めつけは、そんな技術が凝縮されたこのネジ1本の値段。1本0.5円とか。
流通ルートによってはもっと安い場合もある。
 
いったいこのネジを何本作ったら、お父ちゃん1人分の給料が出るのか計算してみ?
仮に売り上げの1/4ぐらいが給料としようか。実際はもっと少ないはずだけど。
それで仮に25万円の給料を払うには、100万円の売り上げが必要だなぁ。
これを全部1本0.5円のネジの売り上げでまかなおうとすると、・・・気が遠くなる。
1ヵ月に200万本作って売らなくちゃならない。週休2日なら、1日約10万本。
もちろん1人で工場が動くわけではないから、工場全体としてはさらに労働人数倍の生産能力が必要ということだ。
 
こんな話、常識的な感覚からすると、「そんなの無理だ」と思わないか?
でも、それは無理じゃないんだ。現に、そうやって作られた made in Japan のネジが、ここにあるんだ。
この驚異的な技術力と生産力の成果が、今、君の目の前で、日本の製造業の根っこの部分を支えているということに気がついてほしいんだ。