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電子書籍、マンガはガラパゴスでもいいじゃん --- 俺の邪悪なメモ
http://d.hatena.ne.jp/tsumiyama/20100507/p1
またAppleは私企業です。俺は権力が表現を規制することには反対ですが、企業が経営判断として恣意的に配信を拒否することは何も問題ないと思います。
私も納得しちゃうんですけど、でも、これって面白い現象だよね。
お金儲けを目的としない公の組織ではダメな事が、お金儲けを目的とする企業が自己責任でやるのならOK、という現象。
ここ1ヶ月ぐらいの考え事ネタにしてきた事、「お金とは数値で管理された権力である」と考えるなら、ここで行われていることは、「数値化されてない権力で言論統制するのはダメだけど、数値で管理されている権力で言論統制するならOK」と言っているに等しい。「数値で管理されている権力」の方に、より大きな自由があるってことだな。そういう事が自分も含めてかなり世の中で認められるみたいだって事。
いろいろ反論のやり方はありえる。たとえば「Appleは世界的大企業であり、社会的な影響力が大きいのだから勝手なことをされては困る」とかね。でもこれ、Appleにしてみれば「社会的影響が大きい」という事を自覚しているからこそ、安全牌を取ってこういう行動に出ているわけで。
でも、同じ行為が、「社会的影響が大きい」はずの法律や行政では認められないというダブルスタンダード。おもしろい。なんでこんな事になっちゃってるんだろう。
似たような事例を考えた。たとえばこういう事だよね。
・いじめや差別はダメ。自己責任でもダメ。
・お金を払って(あるいは貰って)ビジネスとして(エンターテイメントとして)いじめや差別をするならOK。
・・・OKなのか?本当に?
お金が絡むビジネスと、絡まない公権力とで何が違うかというと、その影響範囲。お金が絡むビジネスでは、その影響範囲を限定しやすい。今回の件について言えば、Appleの管轄外の領域に対しては、Appleの決定は何の強制力もない。Appleに関係しない人には関係ない。納得できないならAppleのプロダクツを拒否する権利を皆持っている。それは解る。
でも。なんかちょっと変な感じがする。やってること自体は同じなのにさ。決定的に違うポイントが「お金」に絡む問題なのだとすれば、改めて、お金って変なものなんだなぁ。
組み合わせとしては4通りありえるんだな。
(1)公的にはNG判定。私企業でもNG判定。 ・・・普通。
(2)公的にはOK判定。私企業でもOK判定。 ・・・普通。
(3)公的にはOK判定。でも私企業ではNG判定。←今回のケース
(4)公的にはNG判定。でも私企業ではOK判定。←アングラ系。サビ残とか
今回の件も、(3)→(1)に持って行きたい派と、(3)→(2)に持って行きたい派で、また揉めるんだろうなぁ。
Appleとアングラ系の相性が最悪ってことは間違いなさそう。
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追記。
新聞や雑誌の場合、メジャーなものにはエロ記事は乗らない。一部にはエロ記事だらけの新聞とか雑誌がある。「ブランド」みたいなものがそれぞれ固まっているので、きっちり住み分けが出来ているわけだね。
書店の場合でも、エロ系を一切置かない書店もあれば、エロ系が妙に充実している書店もある。
電子書籍の場合、そういうブランディング戦略みたいなものはこれから固めていく段階なので、一時的にはゴタゴタしても、徐々に住み分け出来るようになってくるんだろうね。そう考えればおかしくもないか。
ただ、書店が、書店の立場で、マンガの中身を検閲して出版社や漫画家に修正を求めるなんて聞いたことが無い。文句があるなら店舗に置かないだけのことだ。
Appleの件も、発端は「配信拒否」なので、そこまではOK。ただ、そこで、Appleの言い分にあわせて中身を書き換えるって、やっぱり変な話だろ。紀伊国屋や有隣堂が(たぶん海外の書店も同じだと思う)既刊の本の中身について「ここ書き換えろ」なんて出版社や著作者に要求するなんて、ありえないんだからさ。