chintaro3の日記 

基本、チラ裏です。書いておくと頭の中が整理できますゆえ。

3Dプリンタの工場の話

ネタ元
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3Dプリンタで作った部品で3Dプリンタを作っている会社が、その部品を大量生産するために自社の3Dプリンタ300台からなる工場を作ったという話。
 
まず、コスト的にどうなのか考えてみる。
普通の射出機なら、10秒に1個ぐらいのペースで物を作る事ができる、これに対して、3Dプリンタでは小さな部品でも1個5時間(18000秒!)とかふつうにかかる。その時間差は実に1800倍である。3Dプリンタを300台並べても、時間あたりの生産性という面では太刀打ちできない。
 
これに対して、装置の価格はどうか。このメーカーの3Dプリンタは市販価格が1台10万円前後。自社の製品を使うなら原価は 1/2~1/3だろう。つまり3~5万円というところだ。300台並べると、それだけで900万円~1500万円かかる。3Dプリンタメーカでないなら3000万かかる。
 
これに対して、量産用の射出機は安いものなら数百万、中古なら数十万からある。装置の歴史が長く、中古の設備の市場があるので、3Dプリンタ出力なみの品質で良いならば、実はそれほど高くない。
 
射出機における問題は金型だ。ちょっと手の込んだものならすぐに百万以上かかる。これが痛い。30種類の金型を作ればもう3000万だ。維持管理費も馬鹿にならない。金型を作ると、早いサイクルでの改良が出来ない。せっかく作った金型が無駄になってしまうという思考になってしまうからだ。一方、3Dプリンタならこれがタダだ。3Dプリンタなら、金型が無いので、思いついたらすぐに改良を加えていくことができる。つまり、技術革新がどんどん進む世界では、金型を使わない3Dプリンタの方が競争上は有利になる可能性はある。そこが企業の運命を変えることもあるかもしれない。
 
自社製の3Dプリンタを大量に並べてガンガン使う、というのは、耐久性試験・信頼性試験を兼ねているという見方もできる。中国産の廉価品の3Dプリンタは耐久性に難があるという指摘がなされる事が多いが、こうしてノウハウを積み重ねることで将来的には差別化ができるだろう。
 
長期的には、金型の制作費や管理コストの低減、早い改良サイクル、自社での入念な耐久性試験・信頼性試験の結果が他社との差別化に大きく寄与するだろう。